わたしはさくら、小学6年生です。
お母さんと、6歳の弟・けんたと、3人で暮らしています。
お母さんは、3年前にお父さんと離れてから、
昼はスーパーのレジ打ち、
夜は飲食店で働いています。
最近、お母さんの顔が少し疲れて見えるのが、
気になっていました。
ある日の夕方
学校から帰ると、
お母さんが冷蔵庫の前で立ち止まっていました。
冷蔵庫の中には、ほとんど何も入っていませんでした。
お母さんは、ちっちゃくため息をついて、
けんたに見えないように、
こっそり目をこすりました。
わたしには、お母さんの気持ちが痛いほどわかりました。
夕飯はいらないよ。
けんたにいっぱい食べさせて」 — さくら(12歳)
本当は、お腹がペコペコでした。
でも、お母さんと、まだ小さいけんたに、
たくさん食べてほしかったのです。
それでもお母さんは、
わたしのお皿にもおかずを乗せました。
でも、お母さんは自分のお皿には、
ほとんど何も盛りませんでした。
一口だけ、口に運んで、
「お腹いっぱい」と笑いました。
その笑顔が、いつもより小さかったのが、
わたしには分かりました。
「お腹がすいた」とは、言えませんでした。
わたしのお皿のおかずは、
半分けんたのお皿に移しました。
夜、布団の中で
お腹がきゅーっと鳴って、なかなか眠れません。
「明日の給食、何かな」
そんなことを考えながら、わたしは目をつぶりました。
次の日の学校
午前中の授業は、お腹が空いてぼーっとしてしまいました。
給食の時間。わたしは、こっそりおかわりを2回しました。
「今日の夕飯も、たぶん少ないから、
いまのうちにいっぱい食べておかなくちゃ」
誰にも気づかれないまま
来年、わたしは中学生になります。
制服、教科書、自転車。
これから、もっとお金がかかります。
でも、お母さんに「欲しい」とは、言えません。
わたしのような子どもは、日本中にいます。
「お腹が空いた」と言いたいのに、
「大丈夫」と笑ってしまう子どもたちが。
誰にも気づかれないまま、毎日を過ごしています。